会員様からの寄稿

利休にたずねよ

 
2013年制作の「利休にたずねよ」のDVDを観た。セリフを抑えた利休の所作の美しさが際立っていた。
監督の美意識のすべてをつくり込んで出来た映画だ。「茶を教えてくれた人からの頂き物」と言い放ち、秀
吉が欲しがる香合を謎の茶器のようにして映画が進行していった。
史実とは違っていても、香合を物語の展開の中心に置くことを考え付いた原作者のアイデアはすごい。国宝級の三井寺、大徳寺、神護寺、南禅寺、彦根城などのロケも取り入れてあったが、沢山の文化財の映像よりも、ただただ市川海老蔵扮する利休の墨染めの衣の似合う茶席が天下一品だった。ところで実在の利休はこんなにかっこ良かったのだろうか? 調べてみると身長180㌢程でかなりの巨躯。長谷川等伯の描いた像ではちょっとぽっちゃりしている。
利休の本名は「宗易(そうえき)」。信長、秀吉と二代にわたる戦国の天下人に仕えた茶人で、私が知っている「利休」の名は正親町天皇(おおぎまちてんのう)より与えられた号とのこと。茶人でもあり商人だった宗易が、町人の身分では宮中参内できないためもらった名前だった。名の由来は諸説あって「利心、休せよ」《才能におぼれず、古老錐(きり)の境地を目指せ》からだと知った。
黄金の茶室は秀吉が造らせたのだと思っていたが、設計は利休だと知ったときには、びっくりぽんだった。映像では上手に茶室として使っていた。
「美はわたしが決めること」と利休は言った・・利休の美意識が、今の茶道の流れに繋がっているのか? あんなにも有名な利休のことを私はほとんど知らないでいた。でも・・お茶の世界が日常の生活とはかけ離れすぎてしまっている。テレビで「急須でお茶を」とコマーシャルが流れていても、日々はペットボトルで暮らしている。どうしてこんな私達になってしまったのだろうか。
 利休の茶の湯の重要な点は、名物を尊ぶ既成の価値観を否定したところにあるのだと知った。実は禁欲的だったのだ。新たに創作したのが楽茶碗や万代屋釜(もずやがま)などの利休道具。高価でなかった点が重要だったはずなのに・・。
  


2019年12月26日 Posted by 県美友の会 at 13:31トピックス