会員様からの寄稿

静岡まつり
手筒花火



力強いゴーという轟音と共に火柱が立つ。竹の筒から吹き上がる火は5㍍。オレンジ色の中に白いキラキラした火の粉が舞い落ちる。筒を抱えた若者の頭上に火の粉が落ちる。その瞬間短い強いボンと大きな音がして地面から火の粉が沸き上がる。手筒の底から破裂する「はね」の衝撃音。そのたびに興奮して大声を出してしまう自分がいた。
静岡まつりのフィナーレが手筒花火だ。今年は安全の為のロープの周りにパイプイスが用意してあった。私が1時間前に到着した時には、最前列は既に人で埋まっていた。
1613年徳川家康がイギリス国王使節ジョン・セリーヌを明国の商人が駿府城内に案内して城の二の丸で花火を見学した・・・と「駿府政事録」「宮中秘策」「武徳編年集成」に書かれていると静岡まつりの情報にあった。その花火が手筒花火らしい。静岡祭りのフィナーレでお披露目のこの手筒花火。迫力が何と言っても凄い。音と炎と男たちに降りかかる火の粉に心がわしづかみになる。
地元の男衆が最初の竹を切るところから最後の火薬を詰めるところまで全て自分自身の手によってつくると聞いたことがある。なぜなら筒から噴出す火の量がまちまちだったから、やっぱり上手下手があるのかとも思う。
ところで私の住む岡部町に龍勢花火がある。これは地元の地区ごとに連があり、各部落ごとに製造方法は秘伝で伝えていた。この龍勢は細い竹の筒に火薬を詰めて打ち上げる。のろしの役目をしたのではとも言われている。
火薬といえば・・猪鉄砲(野荒しの猪や鹿を退治する)に関する古文書がある。江戸時代は領主から鉄砲を借りる形で、作物を守るための道具として幕府や藩は無税で鉄砲を貸与している。ただ管理はしっかりしていて、古文書にはどこの誰に何丁と書かれている。藤枝の横内陣屋では、「浜固め」のときに鉄砲を使える農民を異国船の漂着に動員している。
思うに、火薬を扱う花火は、農民を兵力に考えていたからだ。岡部の龍勢花火・清水の龍勢花火そして手筒花火などは常に農民に火薬のあつかいをさせる事で、駿府の徳川を守らせようとしたのだと・・私は考えている。

  


2019年11月29日 Posted by 県美友の会 at 15:59トピックス

会員様からの寄稿  行ってきました

「百年の編み手たち」展
100年をキーワード+全館リニューアル・オープン


●東京都現代美術館
『本展は、1910年代から現代までの日本の美術について、編集的な視点で新旧の表現を捉えて独自の創作を展開した作家たちの実践として、当館のコレクションを格に再考するものです。  
岸田劉生が活躍した大正時代から今日まで、それぞれの時代の「編み手たち」は、その時々の課題と向き合い、「日本の美術のありよう」をめぐって批評的に制作してきました。本展では日本の近現代美術のなかで、さまざまな要素の選択的な「編集」を通して主体を揺るがしつつ制作を行う作家たちの活動に着目し、その背景を探っていきます。さらに、時代とともに変化してきた、当館が位置する木場という地域をめぐる創造も紹介します。
日本の近現代美術史のなかに点在する重要な作品群を、当館の3フロアの展示室全体を使って総覧することで、百年にわたる歴史のひとつの側面があきらかになるでしょう』
がコンセプト。
小さい白いライラックの香りがほんのり漂う木場公園を歩いた。8年ぶりかもと思う。道すがら都心の公園でテニスを楽しむ人達を左に見ながらたどり着いた。途中の広場は災害の時の避難地にもなっていた。
どうやって搬入したのかとびっくりの大きな作品達の数々。静岡県立美術館でも現代美術を観ることも出来るが、やはりここ現代美術館は半端ない数だ。現代美術が内包している、作家の批評精神を読みきれない作品もまだまだあるなと思って観た。たくさんの冊子も保有しているので、同時に展示していて、それも感動だった。
美術館が評価し応援している「編み手」たちの展示。だが私は、むしろ美術館学芸員が「編み手」だと頷いた展覧会だった。
自分の人生と共に変容してきた様々なアートシーン。この先をまだまだ覗いていたいな。
そんなことを考えた展覧会だった。
  


2019年11月14日 Posted by 県美友の会 at 10:03トピックス