会員様から

大人の修学旅行
中学時代の修学旅行で訪ねて以来、何十年ぶりだろう。あの頃は国宝だと言ってもまだ歴史に裏打ちされた知識も少ししか持たず、皆でわいわいと先生に連れられて回った記憶しかなかった。あの頃は「玉虫の厨子」と「百済観音」の2つに興味があった。玉虫を装飾に使っていることと、百済という地名の異国の香りだった。
法隆寺にたどり着き、百済観音に対峙した。記憶の中の作品はあんなに大きく感じていたのに、今回は小さく感じて不思議だった。中学生の私は見惚れて立ち止まった。ふと気がついたときにはまわりに学校の仲間が誰もいなくて焦ったことを思い出す。外に向けて走りドキドキして建物から出ると皆並んでいた。列に加わり、間に合ってほっとしたことが思い出される。玉虫は直接捕まえたことがあった虫で、それをどんなふうに飾りにしているのだろうと感心があった。昔はまだ家にカミキリムシなども電灯の光を求めてやってくることがあり、その中に玉虫もいた。そのつやつやとしている緑の美しさを飾りに使っている。今回はその玉虫の羽も少なく多分剥げ落ちちゃって地味に感じた。玉虫厨子は推古天皇の愛用品で仏像を安置するための厨子。そこに玉虫の光る羽で装飾してあったのだ。生きてきた分少しは知識も増えたが、感動はとっても少なくなっていた。大人の修学旅行はそんなことを確認した旅行だった。
 玉虫といえば2011年に日韓合作ドキュメンタリー映画「海峡をつなぐ光」という映画製作に協力した『玉虫』の関係者がいた。地元の岡部公民館大ホールでの映画鑑賞があり応援も兼ねて誘われた。会場でのご挨拶で玉虫の飼育に成功した芦沢七郎さん(現在80代)のことを知った。『玉虫を飼育できる』と知ったときは吃驚した。「博物館に玉虫の育て方を聞いても、分からないと言われたので、自分で観察して試行錯誤の末、飼育に成功しました」と語っていた。知らないことに興味を持って自分で観察・飼育に成功させた人生の生き様は脱帽だ。自分の人生でそんな風に突き進む生き様は無かったなーと反省の様な意識があった。エノキの木が餌だと言っていた。二ヶ月位生きているけど、その後は美しい羽を加工して装飾品を作っているらしい。
多分私の中では玉虫は宝石みたいな扱いのイメージが強いのかもしれない。玉虫厨子の装飾がたとえ光を失っていても、宝物なのだ。玉虫を装飾に使おうと思った昔の人の心を思った。
会員様から


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2018年09月21日 Posted by県美友の会 at 11:29 │トピックス