会員様から

一途さ生んだ戦争画
藤田嗣治展

 
前日、東京は豪雨で混乱しているニュースが流れていた。が、朝から何となく落ち着いたシトシト雨にかわった。不安な天気だったが東京都美術館で開催中の「没後50年 藤田嗣治展」を観にいった。81歳の人生だった。自分の礼拝堂の壁画のために80歳を前にしてフレスコ技法に挑んでいる。聖母子像・受胎告知・東方三博士の礼拝・キリストの磔刑がある。「(礼拝堂の壁画を制作するための)足場の上で私は自分の80年の罪を購うよ。私の神は私に力を与えてくれる・・、終わった・・、だが人生は美しいんだ。」そしてシャンパーニュにノートル=ダム・ド・ラ・ぺ礼拝堂に眠った。後には奥さんの君代も一緒に。
今までに藤田嗣治の作品の中では・・「東京国立近代美術館」で従軍看護婦が傷病兵と共に描かれていた戦争画・箱根の「メナード美術館」で《誕生日》という部屋を覗き込む子供達がいる作品を見ていて印象的で忘れられない。
絵のインパクトとは別に気に掛かっていたのは彼の一生だった。結局日本を離れ、晩年に洗礼を受け、しかも礼拝堂を建築した。自分のしたい事が解かっているということは強い。何て幸せなんだろう。
あさひテレビや日曜美術館で「知られざる藤田嗣治~天才画家の遺言」の特集をしいて、藤田の声がテープから流れたシーンがあった。東京都美の中でも藤田の声が聞こえた。ちょっと遊び人風で、風流な人だったんだろう。「しばらくお待ちくださいませ。もう少ししたいことが残っております。どれだけの力が私にあるかを一つまとめて試したいのでござりまする」のせりふ。都都逸風の声も聞こえた。
東京都美の展示は混んでいて、人の流れにあわせて移動した。140点以上の絵は多すぎて、疲れた。藤田の描いた作品の流れを網羅していたので、藤田を理解したい人にはバランスが良い展示だったかも知れない。私はフランス国立近代美術館所蔵の《カフェにて》の憂い顔の女性のポーズがじっくり見られて幸せだった。この絵はニューヨークで描いたが、窓外はパリの街角「ラ・プティット・マドレーヌ」で、解説では〈画面からはもうすぐ始まるパリでの生活への期待と不安が入り混じった、画家の複雑な心情が垣間見える〉と書かれていた。憂い顔をそう理解した解説も面白いが、藤田嗣治の他の絵の表情も似たものだと思う。でもその絵はフランスぽくって美しかった。
会員様から


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2018年11月20日 Posted by県美友の会 at 09:40 │トピックス