会員様からの寄稿

粽(ちまき)狂騒曲
   
会員様からの寄稿

 7月。1150年の歴史がある京都の祇園祭が始まった。テレビはその祭りで売られる厄除け粽の話題で喧しい。『無病息災』のお守りの粽。それも食べるものではない粽で1年間玄関に飾るもの。その粽がインターネット上で高く転売されることへの怒りの話題だった。粽は八坂神社の主祭神に由来していて祭のルーツは疫病を鎮めるのだと知った。
 ところで食べられる粽が私の住む岡部にある。殿にある朝比奈氏の所蔵伝録に「堤中納言兼輔公よりこの家に伝来す。この粽の妙、年経るも味を失わず、食するに一両日空腹の心配なし。これははなはだ妙なり。故に戦場には武将専らこれを愛玩す。今川公、武田公にも献上す。徳川家康公の時代、彦坂九兵衛に数度献上の仰せつけあり。その都度御目録拝領す。その後、諸国の名物相止の仰せ付けあり。このちまきも献上相止申し候」という内容。粽は藤枝市岡部町の朝比奈地区に戦国時代から伝わり、徳川家康に献上したとされる「朝比奈ちまき」。でも粽はつくられてもいないし存在していなかった。朝比奈家に「秘伝」として眠っていて元禄時代以降は途絶えていたのだ。「つくったらうまいかなー」と言う人もいた。そこで朝比奈家古文書の『朝比奈家伝来の秘伝書=御粽之事』を読み取ってもらうことにした。暗中模索の中、私や主人も山から切り取った椿を燃して灰をつくる作業を手伝った。古文書によると、椿の木を燃やした灰にもち米を1昼夜浸けて蒸し、臼でついて笹の葉で包む。アクで薄い黄色みを帯びているが、椿の灰が防腐剤の役目をして日持ちがすることもわかった。素朴な味わいの味だった。が、ただ丸めるだけでなくかっこいい形やイベントで買ってもらえる方法を和菓子屋さんの協力で模索もした。藤枝市にも応援してもらい「朝比奈ちまき保存会」も立ち上がり皆の手で復元することができた。
「急度申し入れ候。朝比奈ちまきいかにも念を入れ、米2石ほど仕り出来しだいに越さるべく候。来月2日、3日頃に出来候ように越し申さる可く候。以上。4月24 彦九兵 ㊞ との村 三郎左衛門」
徳川家康に献上せよ とのこの手紙を受け取った朝比奈家の人達の緊張はいかばかりだったろうと思う。京都の粽をインターネットで売る時代との隔絶にびっくりぽんだ。


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2021年07月06日 Posted by県美友の会 at 15:50 │トピックス